「Muika」(茉莉花)

1.「Muika」(茉莉花)  牧野由多可作曲
筝T 山田 節子
筝U 金津 千恵子
十七絃 柳井 美加奈
尺八 青木鈴慕(人間国宝)
2.「歎詩」  船川利夫作曲
柳井 美加奈
十七絃 横山喜美子
尺八 山口五郎(人間国宝)

エピソード
五郎さんとはいつも、「五郎さん凄いねー」「静夫さんも凄いねー」とお互いに褒め合っていましたね。 五郎さんとの演奏の時は、いつにも増して必死でした。特に「鹿の遠音」の時などはジワジワと土俵際に持っていかれそうになるので、グッと足腰に力を込めて押し返すようにしていました。              (青木鈴慕)

青木鈴慕先生、山口五郎先生の事
青木鈴慕先生に「茉莉花」を、山口五郎先生に「歎詩」をお願いしてレコーディングしたのは、平成4年の今から17年前です。10年前に65歳という若さで突然、山口五郎先生がお亡くなりなりました。事ある毎に山口五郎先生をお願いしていた私は、文字と通り谷底に突き落とされたような気持ちを味わいました。その後、古典のリサイタルに続き「二人会」に毎年ご出演いただいている青木鈴慕先生がリハーサルの度に「五郎さん、早すぎるよ!」と嘆かれるのです。大天才が同世代で2人もいらしゃり、美しいライバルとして戦後の邦楽界を華やかに支え続けてこられたことを感謝しないではいられません。                  (柳井美加奈)
解説






牧野由多可 作曲(Tr1)

1964年「邦楽4人の会」の委託による作曲である。「まつりか」とも読み、これが和名となっているインド原産の花をイメージして作曲された。日本に飛来したこの花の芳香や、高杯形の花が白く咲く美しさと魅力を邦楽器の響きとしてとらえたと作曲者は述べている。
十七絃独奏に始まる旋律が全体を支配するテーマとなっているが、次第に変奏されて、最後に冒頭のテーマが繰り返される。



船川利夫 作曲

1970年、私の好きな漢詩の中から、五つの詩を選び、それぞれの詩の内容か
ら受け取った感動を筝・十七絃・尺八の三重奏にまとめたもので、「詩歌を詠嘆する」といった意味で、「詠詩」と題しました。                (船川利夫)

一、峨眉山月の歌                    李白(Tr2)
峨眉山月半輪の秋 影は平恙江水に入って流る
夜清渓を発して三峡に向かふ 君を思えども見えず渝州に下る

ニ、易水送別                       駱賓王(Tr3)
此の地燕丹に別る 壮士髪冠を衝く
昔時人己に没し 今日水猶ほ寒し

三、春日雑詩                       袁牧(Tr4)
千枝の紅雨萬重の烟 畫き出す詩人得意の天
山上の春雲我が懶の如く 日高くして猶ほ宿す翠微の巓

四、事に感ず                       千墳(Tr5)
花開けば蝶枝に満つ 花謝すれば蝶還稀なり
惟舊巣燕あり 主人貧きも亦帰る

五、江南の春                       杜牧(Tr6)
千里鶯啼いて緑紅に映ず 水村山郭酒旗の風
南朝の四百八十寺 多少の樓臺烟雨の中