1998.9.9 赤坂紀尾井ホールLive Consert
1.天上大風(柳井美加奈作曲)演奏時間9分32秒 SoundPreview
柳井 美加奈
尺八 田辺 頌山
フィンランドでの自作品による公演の為に、
第二楽章構成で筝と尺八の二重奏に
作曲したものである。
当初「天上の蒼」と名付けられたが、
父上の薦めにより「天上大風」に改名された。
2.牧神の恋歌(朝岡真木子作曲)演奏時間9分32秒
ソプラノ 飯田 純子
柳井 美加奈
筝・十七弦 星島 真裕子



そのひとこえは
ほととぎす
夏の日のうたたねのゆめ
わが胸のここにひびきて
うつつにも高くせつなく
時ゆけどもそれもすべなし
うつつにも高くせつなく
この痛み
たれにかたらむ
ほととぎす
そのひとこえは
夏の日のうたたねのゆめ
谷かげに
なほときしらで
いかでわが眠らざりける
3.狐絶(朝岡真木子作曲)
ソプラノ 飯田 純子
柳井 美加奈
筝・十七弦 星島 真裕子


鐘の音は おのれの胸に鳴りやまず
ひとびとは玩具のやうに散っていった
ひとの住むこの地上のはてのいひやうのない暗さ坐て
孤独なこころはおのれの隈どりをさがす
ひとも家も山や川やそしておのれの意志さへ
しかとはみえぬ
しかし孤独なこころは
ある気配を知っている
闇黒のなかの芝生よいしのごとくその心を語るな
ただ燃えよ燃えよ燐のごとく寂かに燃えよ
4.祈りの歌(柳井美加奈作曲・朝岡真木子編曲) SoundPreview
弦楽四重奏 コッコラ カルテット
第一筝 柳井 美加奈
第二筝 芦垣 美穂
十七弦 松浦 奈央
尺八 田辺 頌 山
ウッドベース 吉野 弘志
第一楽章 喜び この世に生を受けた人の清らかな喜び
第二楽章 悲しみ 人として生きてゆくことの悲しみ
第三楽章 復活 自然に沸き上がる力強い生命。中間部の独奏部は、崇高な語りで
聞く者の心を慰め癒してくれる。
5.四重奏断章ハ短調(シューウベルト作曲)
第一筝ヴァイオリン R.T.TUNKKARI
第二筝ヴァイオリン E.KUIV
ヴィオラ T.E.KANGAS
チェロ N.A.J.OUTAKOSKI

この曲は実は一つの楽章でしかない。ソナタ形式を用いており、未完成の四重奏曲の第一
楽章になるはずであった。シューベルトはこの曲を書くまでに実に4年もの間この分野に手を
つけずにいた。この長い眠りは彼に大きな成長をもたらした。彼は自らの言葉を見出し、そ
れを臆さずかたりはじめているのである。饒舌はなく、密度の濃い内容を思慮深い計画のなか
で繰り広げた音楽を書いている。こうした慎重さが、この曲を未完に終わらせているのかも
しれない。            (音楽之友社 「名曲解説全集」より)

6.弦楽四重奏曲(サッリネン作曲)
第一筝ヴァイオリン R.T.TUNKKARI
第二筝ヴァイオリン E.KUIV
ヴィオラ T.E.KANGAS
チェロ N.A.J.OUTAKOSKI

サッリネン(1935〜)の60年代末のもっともよく知られた作品。有名なボホヤ地方のベリマン
ニ曲(フィンランドの西部地方、18世紀のヴァイオリン曲に基ずく村の楽士達の音楽)の
様々な翻案に基づいている。彼は、70年代後半から国際的によく知られたフィンランドの
現代作曲家の地位に上っていった。モダニスト時代を経て、スタイルは単純化の一途をたど
り、同時に個性的になり、感情的に語りかけるようになっていった。作品はしばしば単主題
で、モティーフにおける操作にはシベリウスのモッティーフ技法との共通点が多く見出され
る。主要作品るオペラで、フィンランドの70年代から始まったオペラ作曲の興隆に決定的
な貢献をした。               (オタバ出版「フィンランドの音楽」より)

7.桜変容(柳井美加奈作曲・朝岡真木子編曲) SoundPreview
弦楽四重奏 コッコラ カルテット
第一筝 柳井 美加奈 ・ 平野 裕子
第二筝 芦垣 美穂 ・ 松浦 奈央
十七弦 横山 喜美子 ・ 星島 真裕子
尺八 田辺 頌山
ウッドベース 吉野 弘志
第一楽章 色づいて、今ほころびかける花の蕾を連想して作曲された。淡々と始まる導入部に
自然に誘い込まれていくと、さくらのテーマが筝・尺八へと展開する。フレーズの語尾
についた短いグリッサドが一層愛らしさを添えている。
第二楽章 黄昏どき、蒼い空に浮かび上がる薄墨の桜の姿を、尺八が朗々と奏でる。筝と十七舷が
思いがけぬ表情を演出している。
第三楽章

風に吹かれて、とめどなく、散り急ぐ花吹雪である。縦横無尽に散り交う様は、
さながら絢爛豪華な舞い踊りを見ているようである。(守山 皆子)